太平洋戦争(大東亜戦争)についての史実を無視してSNSに書き込みをするような方がいらっしゃる。
本日驚いたのは「北方四島は安倍が外交でロシアに負けてとられた」という、すさまじく頭の悪いTwitterでの発言である。
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昭和20年7月26日以降のイベントを追ってみよう。
※赤字はソビエトの動き
7月 | 26日 | ポツダム宣言が日本に伝達される |
8月 | |
6日 | 広島に原子爆弾が投下される。 |
8日 | ソビエトが日本に対して宣戦布告。※1 |
9日 | 長崎に原子爆弾が投下される。 |
9日 | ソビエト軍が満州へ侵攻。 |
11日 | ソビエト軍が南樺太へ侵攻。 |
14日 | 御前会議にてポツダム宣言受諾を決定。日本が連合国側にポツダム宣言受諾の用意がある旨を通達。 |
15日 | 日本国民に対し、ポツダム宣言受諾、連合国への降伏を発表。 |
15日 | ソビエト軍が千島列島へ侵攻。 |
22日 | 三船殉難事件。ソビエト潜水艦による引揚船攻撃。 ソビエト軍による、豊原(南樺太)空襲。 |
29日 | ソビエト軍が択捉島を占領。 |
9月 | |
1-4日 | ソビエト軍が国後島、色丹島を占領。 |
2日 | 降伏文書調印。 |
3-5日 | ソビエト軍が歯舞群島を占領。 |
※1 日ソ中立条約は昭和16年4月25日より5年有効でありかつ、その満了一年前までにいずれかが破棄を宣言しなければさらに5年間追加される条約。昭和20年8月は5年以内であり、ソビエトからの破棄についての宣言は昭和20年4月5日であったため、条約の効力は昭和21年4月25日まで継続されるものであった。
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米軍も14日にポツダム宣言受諾の連絡を受けているにもかかわらず、熊谷、小田原、北海道などを14日から15日で空襲しているが、ソビエトはそもそも日ソ中立条約の発効中であるにもかかわらず日本への宣戦布告をし、ポツダム宣言受諾を連合国側に通達した後も南樺太、千島列島、北方領土への攻撃、占領を行った。
もっとも酷いものは降伏文書調印後であるにもかかわらず、歯舞群島を占領しているということだ。
戦争の結果がそれらをもたらしたのが事実であり、また国家間の条約を無視してソビエトが日本への宣戦布告を行うことは、明らかなる条約違反である。
どうみても歯舞群島に至っては、降伏以降の占領であり、ソビエト及びロシアの主張は当てはまることはない。
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かといって、ロシアと戦争をして北方領土を取り戻せ!という主張は百歩譲って議論の中であったとしても、到底適切な発言とは言い難い。
日本の主張はロシアによる不法占拠を解除し、日本国に返還すべしということだ。
ちなみに南樺太は、日本国の立場では「帰属未定地」でしかなく、ロシア領土とは認めていない。
だからこそ日露で平和条約などを結び、これらに決着をつける必要があるのだが、領土問題が片付かねば当然ながら条約など結ぶことはできないのである。
それほど領土とは大事なものなのだということを知れば、易々とロシアとの交渉が進むわけもないのだ。
いくら条約が無効だ、違反だなんだと言っても、戦争に勝った側は事実として奪った土地の占領が可能なのである。
そして、それが戦争が終わってから70年以上も変わることもなく続いているのが現在だということ。
私は南樺太で商売をしていた母方のことがあり、北海道で生まれたからこそこのあたりのことを学んでいる。
全く事実ではない「北方領土は安倍総理が外交でロシアに負けてとられた」などとくだらない嘘をまき散らす者を見逃すことはできない。
北方領土は、ロシア(当時ソビエト)が行った条約無視の占領なのである。